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子供に勉強を教えるとき、けんかにならないようにする方法

難しい問題を教えてもらい、理解できた女子高校生 教育・子育て

保護者の方と話をしていてよくある話が「私が勉強を教えると、いつもけんかになるんです」というものです。

子供は勉強ができるようになりたいと思っています。親も子供が勉強をできるようになってもらいたいと思っています。どちらも見ている方向は同じです。なのに対立が起こってしまいます。

なぜ、こういうことになってしまうのでしょうか。またどうすれば、この対立は防げるのでしょうか。

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勉強を教えるときに言ってはいけない言葉

勉強を教えるときに言ってはいけないのは、「何でこんなことがわからないの」「何でこんなことができないの」という言葉です。

子供の立場に立って想像してください。わからないから教えてもらっているのです。それに対して「なぜわからないの?」と言われても、答えようがありませんよね。

繰り上がりの足し算や繰り下がりの引き算は、小学校の高学年の子は普通にできます。ですが、習った当初は、慣れるまで苦労しますよね。掛け算の九九も同様です。今は普通にできます。ですが、その当時はどうだったでしょうか。

私たちは長く生きていますので、できるのは当たり前です。その当たり前の視点から語っていけないのです。その当事者の視点に降りて、一緒に考えることが大事です。

また教えていると、相手のレベルが低く思えます。ですがそれは錯覚です。

フィギュアスケートの村上佳菜子選手ですが、彼女はバスケットボールが苦手だそうです。ドリブルもまともにできず、すぐにボールを取られてしまいます。シュートをしても、ボールはゴールに向かわず、真上に投げ上げてしまう始末。

さて彼女は運動神経が悪いのでしょうか。いえ、そんなことはありません。ソチオリンピックに出場するような人ですから、運動神経が悪いわけはありません。ただ、球技が苦手なだけなのです。

教えていて、相手のレベルが低く思えてしまうのは、これが原因です。一番悪いところを見て、全体を判断してしまっています。

そして相手にもプライドがあります。自分を実力以下に見られたら、腹が立ちます。それがけんかになる理由です。

けんかにならないように教えるには

ではどうすればけんかにならないように、勉強を教えることができるのでしょうか。これは無理です。一対一で教えると、多かれ少なかれその間に摩擦はおきます。仕方がありません。

逆の立場で考えてください。初めての職場で、仕事を教わると想像するのです。「まずあれしてこれして、そしてこれをします。もしこれがこうなったらこうして、ならなかったらこっちをこうする。わかった?」

わかるわけがありません。わかるようにちゃんと教えてくれよ、と思いますよね。ですが、相手としては、これくらいはできて当たり前と思っています。すでに経験がありますから、習慣として体に染みついているんですね。

そこで「何でこんなことがわからないの?」と言われれば、腹が立ちます。それと同じことが子供に起こっているのです。

けんかにならないように教えるのが無理なら、どうすればよいのでしょうか。答えは簡単で、教えなければよいのです。教えずに自分で気づかせることができればよいです。

例えば何か困っている様子なら、その問題に関する参考書のページを開いて、「その問題のやり方は、ここに載っているよ」と、見せてあげればよいでしょう。それで子供は気づくことができます。

勉強を教えるタイミング

勉強を教えるタイミングも重要です。手が止まっているから「教えてあげようか?」と言うと、「いや、今考えているところなんです」と断られることがあります。このとき、私は「やってしまった!」と反省します。

この考えているところに、「教えてあげようか」と来られるのは、子供の立場に立ってみると、本当に嫌なものです。まず、思考が途中で途切れてしまいます。そして「教えてあげようか」という言葉は、とらえようによっては、上から目線にも感じます。

例えばテレビゲームをしているとしましょう。

「そこの洞窟の右側に、隠し通路があるよ」「最初は防御力よりも、攻撃力を挙げたほうがいいよ」「そこの柱を盾にして、敵の攻撃を防がないと!」

いやいや、自分でやるから、ちょっと黙っといてくれませんか、となりますよね。余計なお世話というやつです。

「教えてあげようか」はそれと同じなのです。だから、本当にその人が困っているのか、人の手を借りたいと思っているのかどうかをしっかり見極めないと、いけないのです。

では、そのタイミングとはいつなのでしょうか。一番わかりやすいのは、「これってどうやるの?」と質問してきたときです。まぁ、当たり前ですね。

逆にそれ以外の時は、タイミングを計りづらいとも言えます。塾の講師をしていてもそう思うのですから、保護者の立場ならなおさらです。なので基本的には、子供から「これってどうやるの?」と言ってこない限り、勉強は教えないほうが無難です。

教えない代わりに教えてもらう

とはいえ親の立場で見て、間違いがわかっているのに、それを教えられないとなれば、歯がゆいです。どうすればよいでしょうか。

一つおすすめの方法があります。

例えば数学の宿題を見て、間違っている問題があるとします。それを教えてあげるのではなく、逆に教えてもらうのです。具体的にはこのような感じです。

この問題だけど、どうやってやるの?

え? これは…えっと…ちょっと待って

そしてその子は、そのやり方を調べなおすでしょう。調べて分からない様子なら「一緒に考えてみようか」としてもいいです。

あるいは「先生に解き方を教えてもらってきてくれない?」とお願いすればよいです。あくまで母親の私が、その問題の解き方を知りたいという体です。それで子供のメンツはつぶされません。

まとめ

人の物を教えるのは難しいです。下手にしてしまうと、相手のメンツをつぶして、対立を起こします。これは本当に不幸なことです。基本は相手が「ここ、教えて」と言ってくるまで、教えないのがいいです。

そう考えると、勉強を教えることよりも、むしろ素直に子供が「ここ、教えて」と言ってくるような関係づくりのほうが大切ではないでしょうか。

松平定信の「花月草紙」に、このような話があります。

この人、このところは長じぬれど、ここはいとみじかし。そのみじかきところを引きのべんとするは、いとくるし。知己の人ことばを求めなば、もとよりいふべし。されど、しばしばすべきにあらず。

【現代語訳】
この人のここは良いが、ここは悪い。その悪いところを直そうとするのは、とても難しい。仲が良い人がアドバイスを求めてきたら、言ってあげるべきだ。しかしたびたびするべきではない。

松平定信「花月草紙」

「アドバイスを求めてきたら、言ってあげるべきだ。しかしたびたびするべきではない」というのは、その人の悪いことを指摘するのは、極力避けてましょう。こちらから言うなんてことはもってのほかだ、ということです。

まさに今回のテーマの内容がここにあります。

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