母・父・私で面談したときの話です。
母 :「あの子の性格的に、個別指導の方が向いていると思うのよ」
私 :「性格的にそうかしれませんね」
父 :「学校が集団なんだから、集団でやっていけないと、これからどうするんだ」
私 :「確かに、そういう考えもありますね ……」
母 :「向いてないのに、無理やりさせても意味がないじゃない」
私 :「そうですね ……」
父 :「向いてなくても、練習させないといけないんと違うか」
私 :「そうですね ……」
集団指導 (クラス授業) がよいのか? 個別指導がよいのか? どっちなんでしょう?
集団指導のメリットとは
集団指導の形式は、皆さんが体験されている学校の授業と、基本的には同じです。もちろんそれぞれの塾で工夫をして、特色ある授業を行っているところもあるでしょう。あるいは、ここ数年の入試改革の影響もあり、学校の授業にも変化が見られます。
しかし基本は教室の前にある黒板 (ホワイトボード) などを使い、ある集団に対し一斉に授業を行います。 大きな特徴は、授業の進め方がその担当講師に任されている点です。
もちろんある程度の要望は出せるかもしれませんが、一人一人の要望を聞いていたら収集がつきませんので、担当講師が主体性をもって、授業を進めていくことになります。
この集団指導の良い面としては、計画的に勉強が進められる点です。そういうスケジュールを先生が考えてくれています。長い目線で考えて、効率良く学べるであろう、長期のスケジュールをです。
どうしても個人で勉強をすると、好きな教科や単元に集中したり、あるいは逆に苦手教科や単元に集中したりしてしまい、全体を見据えた勉強にならないことがあります。結果、テスト前にあわててしまうことがあります。そういったスケジュール管理を、集団指導ではやってもらえるのです。
また集団指導では周りにライバルがいます。テストの点数が発表されるかもしれませんし、そうでなくても授業内での発言の様子から、周りと自分の立ち位置が見えてきます。
そうなると、周りは理解しているのに自分は理解できていない。ちゃん復習しないとまずいぞ。と、頑張るかもしれません。あるいは周りからできる奴だというレッテルを貼られて、それを守ろうと頑張るかもしれません。そういう周囲の目が集団指導には存在します。
集団指導のデメリットとは
集団指導のデメリットとしては、まずスケジュールに融通が利かないということです。全体で行動しているため、臨機応変な対応が難しいということになります。
クラス内にレベル差があれば、問題を解き終わってボーっとしているのに、ほかの人はまだ半分くらい問題が残っているという状態になります。逆に自分がわかっていないのに、授業が先へ先へ進んでしまうこともあるかもしれません。
周りの目があることも良し悪しです。それによって委縮してしまうこともあります。「お前こんな問題もわからないの?」なんてはやされると、答えるのが嫌になる人もいるでしょう。
個別指導のメリットとは
対して個別指導の形式は1対1、あるいは1対2かもしれませんが、黒板を使わず、生徒の横について教えるというものです。家庭教師もこの形式に当てはまります。この形式の一番の特徴は、距離が近いということです。
この距離というのは実際の距離というのもそうですが、心の距離という面においてもそうです。心の距離の近さゆえ、質問などがしやすくなります。
またスケジュールにおいても臨機応変な対応が可能です。その子に合ったスケジュールを考えてくれたり、苦手部分の対策をお願いすれば、対応してくれたりするでしょう。
そして余計な雑音が入りません。周りを気にすることなく、自分自身の問題に向かうことができます。
個別指導のデメリットとは
個別指導のデメリットとして、まずあげられるのは、長期目線に立ったスケジュールが立てづらい、スケジュール通りに進みづらいということです。
個別指導は質問がしやすいです。その反面、質問することによって、その分授業進度が遅れるのです。また担当の指導員にとっても、その子の弱点が目につきます。するとその部分を重点的に指導することになります。授業内容に偏りができるのです。
また周りに人がいないということは、目安になるものがないということにもなります。自分なりに頑張っているとしても、それは全体からすると大したことがないことがあります。これくらいできていればいいかな、と思っていても、全体で考えれば、全然足りないこともあります。
そして個別指導では、切磋琢磨して成長することができません。「ライバルは自分自身です」なんて、格好いい言葉がありますが、それを実行しなくてはなりません。
どういう人が集団指導に向いているのか
どういう人が集団指導に向いているのでしょうか? まず学力的なことでいえば、いわゆる普通の人が向いています。極端にできる人は集団指導では物足りなくなります。逆に極端にできない人は、ついていけなくなります。
もちろんレベル別のクラス分けがあるのなら、多少は緩和されます。しかし、同じような学力の生徒を集めて指導をしても、やはりその中でレベル差は生まれるものです。どうしても、「手持ち無沙汰」や「理解できないまま先に進む」の存在はあります。それは集団指導の宿命です。
性格的な面でいえば、外向的な人が集団指導に合っています。一番わかりやすいのは、定期テストが返却されたときです。友達と点数を見せ合っている人は、集団指導に向いていると思います。
どういう人が個別指導に向いているのか
どういう人が個別指導に向いているのでしょうか? 学力的なことでいえば、まず学校の授業についていけない人です。学校で教わった内容が、まったく理解できない。ノートが取れない。そういう人です。
これは学力もそうなんですが、その人の性質にもよります。黒板を使って前で説明されても、頭に入らないのに、横について隣で説明されると、すぐに理解できる子も実際にいます。
また学校の勉強が簡単すぎてつまらないと感じてしまう人も、個別指導には向いています。どんどん先へ進んで、自分のペースで勉強を進められるからです。もちろんこれは独りよがりになっている可能性もありますので、担当の指導員の力量も問われます。
性格的な面でいえば、内向的な人が個別指導に合っています。定期テストの例でいえば、点数の部分を折って、すぐに隠してしまう人です。
まとめ
先日入塾希望の方が来られました。そしてこんな話になりました。
私 :「集団指導と個別指導のどちらをお考えですか?」
母 :「個別指導は高いんでしょ。うちはちょっと無理だわ」
一般的には時間単価で、集団指導は安い、個別指導は高い。その分、集団指導は成績が上がりにくい、個別指導は成績が上がりやすい、というイメージがあるかもしれません。
ですが、本質はそこではありません。集団指導と個別指導は、そもそもシステムが全然違うものだ、ということを知っていただけたらと思います。
一番は学習スケジュールの面です。長期目線でのスケジュールが良いのか。それとも個別のスケジュールが良いのか。集団指導か個別指導かは、それを吟味したうえで、判断されるのが良いのではないかと思います。
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