子供が嘘をつく理由と、その嘘にどう対応するべきか?

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「子供は正直者」と言われます。確かにそういう面はあります。しかし同時に「子供は嘘つき」です。まぁ、子供に限った話ではないのでしょうけれどね。

嘘には二種類ある。過去に関する事実上の嘘と未来に関する権利上の嘘である。

ルソーは「エミール」の中で、「嘘」についてこう言っています。まさに、今回の話は、この二種類の嘘についてのものです。

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先生を変えてほしい

数学がわからないって言っていた

個別指導を受けている生徒の保護者から「担当の先生を変えてほしいのです」と連絡がありました。よくよく話を聞いてみると、「担当の先生が、数学がわからないから、教えられないって言っていた」と、子供が言ったそうなのです。その担当はバリバリの理系の学生で、中学レベルの数学がわからないなんてことはあり得ません。

その生徒は数週間前に、別の担当から今の担当に変わったのです。その理由は、前の担当に慣れてしまい、甘えているのでもっとピシッとした先生にしてもらいたいということだったのです。結局、前の先生に戻してほしかったのではないかと思います。

教えてもらえなかった

しばらくしてまた「先生を変えてほしいのです」と連絡がありました。今度は「質問しても、先生はあまり教えてくれない」と言っていたとのことです。

いやいや、ちょこちょこ様子を確認していますが、間違った問題を教えてもらっていましたし、そもそもその子は何を教えてもらいたかったのでしょうか? それをたずねると、「さぁ?」というお母さんの返事。

教え方が悪い

しばらくして今度は「成績が上がっていない、先生の教え方が……」と連絡がありました。先生の教え方が上手か下手かは主観なので、それが子供の嘘とは言いませんが、ここまでくるとどうなのかなぁ、と考えてしまいます。

この子は私立の中学校に通っています。レベルの高い学校です。中学受験の時から塾に通っているのですが、その中学に合格するまでにも苦労がありました。レベル的にはギリギリです。結果なんとか合格できたという状況です。

いざ中学生活が始まると、学校のレベルもそうですが、周りのレベルも高いです。定期テストの問題をみましたが、普通の公立中学の問題とはやはり違います。難しいです。それでも周りの賢い子たちは90点以上を取ってくるのだそうです。

それと比べてその子は、なんとか平均点か、それにやや届かない点数しか取れません。とはいえ、入学時にはギリギリで合格なので、頑張っている方だとは思います。ただ、母親としては、それでは満足できないのです。

話を戻しまして、「先生の教え方が……」の件ですが、定期テストの問題と、個別指導で使っているテキストを照らし合わせてみると、テキストでやった問題が、定期テストでも出ています。テキストで間違えて、そしてやり直して正解しているのに、定期テストでまた間違えてしまっています。

これは「教え方」ではありません。やり直して正解しているということは、その場では「わかった」と言うことです。その時点で、教え方の上手・下手の問題は終わっています。

そして定期テストで間違えたということは、その原因は家での練習不足になるのです。つまり子供の「先生の教え方が悪い」という指摘は、嘘とは言いませんが、的外れなのです。

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なぜ子供はうそをつくのか

この子のついた嘘は、ルソーが言うところの「過去に関する事実上の嘘」です。過去の嘘は本音の関係性が、できていないから起こるのだと思います。ですので、嘘をつかれた場合、嘘をついた相手を叱るよりも、本音の関係性を築けなかった自分を反省すべきかと思います。

この子の場合、原因の一つは母親のプレッシャーでしょう。親の前では良い格好がしたい気持ちがあると思います。親子で膝を突き合わせ、本音で話をしていたら、こういうややこしい話にはならないと思います。

ただ、それを言えば、私とその子の間も、同じような感じだったのかもしれません。子供の口から、母親の愚痴がボロボロ出てくるくらいの本音の関係なら、また話が変わっていた気もします。

あと少し広い目で見てみると、子供が嘘をつくのは、ある意味喜ばしいことでもあります。思っていること、感じていることを、そのまま全て口に出すのが果たして良いことかと言われると、微妙ですよね。精神的に成長したから、嘘をつくのです。

二つの目

では、次の話です。ルソーが言うところの「未来に関する権利上の嘘」についてです。

河合隼雄先生の「こころの処方箋」に、このような話があります。とんでもない非行少年がいて、退学にさせようかという状態だったのですが、とりあえずカウンセリングを受けて、様子をみようという話になったのです。

ところが会って話を聞いてみると、本人は前非を悔いていて、これから心機一転して頑張ってみたい。自分は大学の法学部に行き、法律を勉強して、将来は非行少年たちの役に立つような人間になりたい、と話をする。…… 少年は毎週やってきて、これからは心を入れ替えて、どのように勉強しようとおもっているとか、今週はもう既に大分勉強が出来てきたなどと話をしてくれる。…… カウンセラーは非常に喜んで、そろそろ (カウンセリングを) 終結にしようなどと思っていると、高校の担任教師から連絡があり、少年の素行が以後も悪くなるばかりだし、親もあきらめたような状態だし、本人も退学を希望しているので、退学させることにしたとのことであった。これにはカウンセラーは全く驚いてしまった。……

この原因を河合先生は「一つの目」だけで見ていたことにあると、指摘しています。「甘い目」だけでなく、「厳しい目」でも見てあげていれば、この高校生の立体像が浮かんでくるし、この高校生にしても、無理していいことばかり言う必要はなくなるのだそうです。

また河合先生がおっしゃるには、この「未来に関する権利上の嘘」は「嘘」ではないとのことです。「心機一転して頑張る」と言ったとき、それは嘘ではない。しかし頑張ろうと言いながら遊びたくなる …… それは確かにありますよね。

そう考えると「未来の嘘」は、嘘というより人間の弱さなのかもしれません。

また「未来の嘘」は、卵から鳥のひなが孵化するときのようでもあります。殻が割れ、くちばしが出て、顔が出て…… と一つ大きな自分に成長するために、何度も何度も卵の殻を内側からたたいている様子にも感じます。

一回ですぐに成功しないのです。二回三回、場合によっては何十回、何百回と試みて、やっと成功するのです。「未来の嘘」とはそういう「一つ大きな自分に成長するためのあがき」なのかもしれないとも思うのです。

あえて甘い目だけで見る

英語の不規則動詞のテストをします。なかなか覚えてこない生徒がいます。その子が「先生、英語の不規則変化を覚えたいので、練習プリントください」と言ってきました。やっとやる気になってくれたか、とうれしく思います。そして次の週のテストです。…… 全然変わっていません。

普段、宿題をやってこない生徒がいます。ある日、その子が「先生、宿題やってるよ」と見せてくれます。「おっ、ちゃんとできているね。やる気になってくれて、うれしいわ。」と、私が言います。そして翌週 …… 宿題をやってきていません。

カウンセラーなら、「甘い目」と「厳しい目」の両方で立体的に把握しようとする必要があるでしょう。ですが、私はカウンセラーではありません。私はこういうとき、あえて「甘い目」だけで見るようにしています。

「不規則変化、来週こそは覚えてくるよね。やろうという気はあるもんね」、「宿題、来週はちゃんとやってくるよね。そういう人だもんね」と、ニコッと微笑んであげるのです。

D・カーネギーの「人を動かす」人を変える九原則の第七章「期待をかける」にこのような例があります。

あるセールスマンが商品を売り込みに行って、断られたのですが、もう一回挑戦しようと思ったのです。一度行って断られているのですから、普通に行っても話を聞いてくれるはずはありません。そこで彼はこう言ったのです。

「…… お話しする時間を少々割いていただけませんか。あなたはいつもわたしのいうことに耳を傾けてくださり、ご納得になると、率直に最初の決定をかえていただける心の広い持ち主だと前々から尊敬していました」

これで、店主はセールスマンの話をもう一度聞くことになったのです。

自分についてよい評価があたえられたら、それにこたえようとするのが人の気持ちです。そうなればいいなぁ、という期待半分で、私は基本的にあえて「甘い目」だけで見るようにしています。

まとめ

ということで「過去の嘘」と「未来の嘘」についてみていきました。嘘は言われた方にしてみれば、腹が立ったり、がっかりしたりします。ですが、私はその気持ちを捨てるようにしています。

過去の嘘に関しては、私は本音の関係性が築けていなかったと反省します。未来の嘘に関しては、あえて何度も騙されます。

嘘は悪いことのように言われます。しかし子供の嘘に関しては、それが成長の一過程であると思えば、むしろ喜ばしいことのようにも感じられるのではないでしょうか。

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