「どうやったらうちの子は、やる気になるんでしょうか?」という質問を受けることがあります。
それに対してあれしてみてはどうか、こうしてみてはどうかと提案します。また要望を聞いたりしながらそれなりに、具体的な対策を打ち出します。そして「それをやりながら、少し様子を見ましょう」という結論になります。
ただ、実はそういうことになりながら、本当にこれでいいのか? という何かもやっとしたものが心に残るのです。「子供をやる気にさせる」ということについて、考えてみましょう。
「叱るのではなく、ほめましょう」の結果
人をやる気にさせる方法というのは、書店に行けばいろいろあります。コーチングだなんて、たいそうなネーミングで呼ばれてもいます。よく言われているのは、「叱るのではなく、ほめましょう」というやつです。実際に実行してみた方もいるのではないでしょうか。それで結果はどうでしたか?
叱らずにほめても、人は変わらないですよね。というより、変わるところまでほめ続けられないと思います。そして無理やりほめるポイントを見つけたところで、そんなものは子供に見抜かれています。永遠にほめ続けるならともかく、中途半端になるなら、やらない方がましです。
「最近のお母さん、なんか気持ち悪い」
「はぁ? あんたのためを思ってやっているのに!」
なんてことになったら、最悪です。このやりとりですが、「あたしんち」というアニメでやっていました。
「叱るのではなく、ほめましょう」というのは、実は逆接表現なのです。「あばたもえくぼ」という、ことわざがあります。その対象のことが好きで、本当に興味を持ってみるなら、他の人がマイナスに見てしまうところも、プラスに見えるのです。つまり相手を変えるのではなく、まず自分が変わる必要があるということを言っているのです。
もちろん、これは大切なことなので、意識してもらいたいと思います。そしてもう一つ意識してもらいたいのが、その逆の話です。つまり、やる気をなくさせない方法についてです。
やる気をなくさせない方法
がっかりする
やる気をなくさせない方法については、やる気を出させる方法よりも、実行に移しやすいです。「叱るのではなく、ほめましょう」の前半部分。「叱らない」だけを意識すればよいのです。
よくあるのがテストの点数です。「何、この点数! 一体何を勉強してたの!」としてしまうのは、子供のやる気をなくさせます。
「そうかぁ、これは残念やなぁ。何がダメだったんだろうね」
というのが、子供のやる気をなくさせない言い方です。
簡単ですよね。がっかりすればいいんです。別に意識しなくても、実際に低い点数を見せられたら、がっかりしますよね。怒りの気持ちを捨てれば、残るのはおのずと落胆の気持ちになるはずです。それを素直に出せばいいんです。無理は必要ありません。
勉強の環境を整える
「勉強、しなさい!」も、子供のやる気をなくさせます。「勉強をしなさい」と言葉にするのではなく、勉強をする環境を作ることが大事なのです。例えば9時から10時はテレビを消して、勉強をする時間とするのです。いきなり子供にそれを押し付けるのが難しいなら、まずは自分からそれを宣言して、やってみるのです。
「今日から英語の勉強始めるわ。9時から10時はテレビをつけないでね。」と言って、英検の問題集か何かをやり始めるのです。お父さんや、小学校の子供も巻き込めるなら、その方がなおよいです。そして頃合いを見て「あんたも一緒にやってみない?」と持ちかけるのです。
それが難しいようであれば、塾などと相談して、毎日一時間自習に行く、と決めるのもいいでしょう。家にいればマンガやテレビ、ゲームなど誘惑があります。少なくとも塾の自習室なら、やることは勉強しかありません。そういう勉強する環境を作っていくのです。
もちろん勉強する環境ができたからといって、子供がすぐにやる気になるとは限りません。これはあくまで子供がやる気になった時に、すぐに取り組むことができるための準備なのです。ですので、勉強時間を決めたとしても、「だらだらやっているなぁ」とか、「塾で自習って言っているけど、ちゃんとやっているのか?」とか、やきもきすると思いますが、それを表に出してはいけません。
いつでも本気で勉強ができる環境さえ整えてあげれば、それで役目は終了です。あとは見守るだけです。
子供はいつやる気になるのか
では、子供はいつやる気になるのでしょうか? それは個人差がありますので、一概には言えません。三年生になるタイミング、クラブ活動が終わるタイミング、といった時期的なものもあります。また友達とテストの点数を勝負して、その流れでやる気になることもあります。あるいはドラマの影響を受けてやる気になるなんてこともあります。そして残念ながら、やる気にならない子供もいます。
子供がやる気になるタイミングなんて、正直分かりません。そして先ほど、「やる気にならない子供もいます」と言いましたが、その子が何年かたって、立派な社会人としてあいさつに来てくれたこともあります。やる気になるタイミングは、中学の間とは限らないのです。それは高校になってからかもしれませんし、もしかすると成人してからなのかもしれません。
そう考えると、「子供をやる気にさせる方法」なんて、おこがましいとは思いませんか? 人はそれぞれのタイミングでやる気になり、それぞれのタイミングで成長していくのですから。
まとめ
結局、「子供をやる気にさせる方法」というのは、細かい話でいえば、いろいろあるのでしょう。しかし、本質で考えれば、私たちができるのは、その人がいつやる気になっても大丈夫なように、環境を整えてあげることだけなのではないかと思います。
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