「ぼくの頭はニワトリなんです」このように言う子がいました。どういうことかたずねると「三歩進むと忘れるんです」とのこと。
いやいやそんなことを知っているなんて、物知りじゃないですか、とも思いましたが、確かにその子はすぐ忘れる子でした。一問やって、別の問題をすると、そのつい一問前にやった内容を忘れます。
覚えないとテストで点が取れません。三歩進むと忘れてしまう人は、どうやって覚えればよいのでしょうか。
すぐに記憶してしまう人の記憶法
一目見ただけで、記憶してしまう人がいます。写真のように記憶できるそうです。サヴァン症候群の能力として、すさまじい記憶力を持つことがあるそうです。記憶の速い人は、みんなそうなのでしょうか。
そんなことはありません。ですが、すぐに記憶できてしまう人たちの様子を見ていると、共通点が見えてきました。それはつながりを持って、記憶しているということです。何か以前の記憶に、新しい記憶を紐づけているんですね。
こんな子がいました。植物の茎のところを勉強しているときです。「師管 / しかん」は「歯間(しかん)ブラシ」だ、と言い出したのです。それだけなら単なるダジャレで終わりなのですが、その後がすごいです。
師管は、葉でできた栄養を運ぶんでしょ。だから「葉」と「歯」で歯間ブラシって覚えるんです。導管と師管を合わせて「維管束(いかんそく)」、これは覚えないと「いかん」ですね、とのこと。感心しましたね。
まぁ、これは特別すごい例です。ですが記憶の速い人は、多かれ少なかれ、こうやっていろいろ関連付けて覚えています。
それに対してすぐ忘れてしまう人は、単発で覚えようとしているのです。つながりを持った記憶と比べると、単発記憶は頭に残りにくいのは分かりますね。
では、つながりを持って記憶すればいいじゃないかというと、そうではありません。つながりを持って記憶するのは、ある意味センスです。センスがない人は、つながりを持って記憶しようとしても、うまくできません。
もちろん、その努力をするのはいいことです。つながりを持って記憶する努力をしていくうちに、だんだんとセンスが磨かれていくこともあるでしょう。ただセンスなんて、そう簡単に身につくものでもありません。ではどうすればよいのでしょうか。
ミルフィーユ式記憶法
そこでおすすめは「ミルフィーユ式記憶法」です。みなさん、ミルフィーユは好きですか? おいしいですよね。
ミルフィーユに用いるフィユタージュは、四角く広げた小麦粉生地に平らにしたバターを乗せ、何回も折りたたんで作るもので、折りたたむ工程を重ねるほど層が増し、パリパリとした食感になっていく。工程を5回繰り返し729層となったものや、6回繰り返し2187層になったものが主に用いられており、その層になった生地を何枚か重ね合わせて、さらに沢山の層をなしているという状態を「千」で表現し、また層になったフィユタージュの落ち葉をイメージさせるような独特の焼き上りを「葉」として表現し、mille-feuilleという合成語として文学的に言い表したものが名前となったとも考えられている。
Wikipedia
さすがに千回はどうかと思いますが、そのイメージで何回も繰り返し練習するのです。これは三歩進んだら忘れる人には有効です。
まずは、同じようなレベルの問題集を、三つ用意しましょう。薄いやつでいいです。詳しい解説は必要ありません。一問一答形式のやつでいいです。そして覚えないといけない単元を、1日おき順々にやっていきます。
一冊目をやった時は、「全然わからん」となるでしょう。二冊目をやると「全然覚えられん」となるかもしれません。三冊目をやっても「答えが全然出てこない」となります。
この3つの感想は、同じように見えて全然違います。まだ海面から姿を現していませんが、火山活動によって地面が徐々に盛り上がっている状態です。
そこで二周目です。二周目が終わるころには、覚えられているものがちょこちょこと出てきます。3冊の問題集に、共通して頻出するような、重要なものが頭に残り始めたのです。
ポイントは、根を詰めないことです。問題をやるときは、わからなければ飛ばします。考え込む必要はありません。わかるものだけ、答えを書きます。そして解答を確認します。
解答を確認するときも、「ふーん、そうなんだ」程度で良いです。覚えられていなかった用語は、声に出して、一・二度書いて練習するくらいはしてもいいかもしれません。ですが、「100回書いて練習するぞ」なんて、しなくていいです。
そして三周目です。三周目が終わるころには、ある程度覚えられているはずです。ミルフィーユのように層を重ねていくにつれ、記憶が2重3重と厚くなっていったのです。
一冊1日×3冊×3周=9日。問題を解いて、答えを確認するだけです。これがミルフィーユ式記憶法です。特に理科や社会の用語の暗記には有効です。
さてこのミルフィーユ式記憶法ですが、これにはセンスは全く必要ありません。そして努力もいりません。ただただ、問題数をこなすだけです。必要なのは時間だけです。
まとめ
ミルフィーユ式記憶法は、ウサギとカメの競争で、カメがウサギに勝つための方法です。
すぐ覚えられる人の記憶は短期記憶となり、すぐ忘れてしまうことがあります。逆になかなか覚えられない人が覚えた内容は、長期記憶となり、忘れなくなります。
ミルフィーユ式記憶法は、記憶が何層にもなっているので、一枚二枚はがれても、他の層がカバーしてくれます。そのため入試という、長期記憶が必要な試験に対しては有効です。
「三歩進むと忘れる」
それもいいじゃないですか。その度に覚えなおすのです。その回数が多ければ多いほど、ミルフィーユの層がしっかりしてきますよ。
コメントをどうぞ