定期テスト前に、学校から紙が配られます。その紙には定期テストの目標点数や何を頑張りたいかという意気込みなどを書きます。そしてテスト一週間前からのスケジュール表があって、そこに目標勉強時間と実際の勉強時間、そして具体的に何をしたかを書く欄があります。
その時によくある質問(?)が「塾の時間は勉強時間に入りますか」です。
「まぁ、入れておいたらいいんじゃないの」と答えますが、本心は塾の時間は勉強時間には入らないと思っています。どういうことなのかを、書いていきます。
やらされる勉強と自らやる勉強
世の中に「やらされる勉強」と、「自らやる勉強」の二種類があるのは、みなさんご存知でしょう。塾の勉強時間はどちらかと言えば、「やらされる勉強」です。
中には「いや、僕は塾が大好きで、自分から進んできていますよ」という人がいるかもしれません。ですが、それでも塾は「やらされる勉強」です。それは授業形態がそうなっているから仕方がないのです。
一般的なクラス授業はもちろん、個別指導においてもその授業で、講師の方から何をするのかという指示があるはずです。その指示があった時点で本人にやる気があろうがなかろうが、それは「やらされる勉強」なのです。
「やらされる勉強」と「自らやる勉強」の理解の差について、このような話があります。
定期テストの問題
ある中学校で毎年定期テストに出題される、少しマニアックな問題があります。なかなか初見では解くことが難しく、ある程度手順を丸暗記する必要があります。そしてそれを授業で説明するのですが、ほとんどの人は「ぽかーん」です。
そして、あまりの反応の悪さに、「この問題は、また定期テストが近づいてから、もう一度そこで復習しましょう」と、その場で理解させることを半ばあきらめ、後回しにしてしまいます。
そして時が経ち、定期テストが近づいてきます。一人の生徒が分からない問題があると言って、学校の問題集を手に質問にやってきます。それがその例の問題なのです。
説明をして確認すると、「理解しました」という返事。そしてもっと練習したいので同じような問題出ているプリントが欲しいと言います。そこで「この問題って、前に授業でやったんだけど覚えている?」と聞くと、「え? そうでしたっけ?」と返ってきます。
授業に興味を持ってもらえるように、理解しやすいようにといろいろ考えて、工夫をしていますが、結局はこういうことです。やらされる勉強が「3」とすると、自らやる勉強は「8」くらいの力があります。それくらい差があるのです。
解答テクニック
こんなこともあります。ある問題のやり方に2種類の方法があって、一つは普通のやり方です。そしてもう一つのやり方は、いわゆるテクニックと呼ばれるようなもので、途中の考え方をすっ飛ばして答えを導けるようなものです。
ちゃんと理屈を理解してもらいたいので、普通のやり方を教えたうえで、おまけとしてテクニックを教えます。しかし生徒たちは「教えてくれるの、後のやつだけでいいのにー」なんて言います。
そしてしばらくたったある日、ある生徒がこんなことを言いだします。「先生、この問題なんですが、こんなやり方があるって知ってますか?」
そのやり方こそ、この間の授業で教えた「テクニック」のやり方です。そしてその生徒は、そのやり方を友達に教えてもらったと言うのです。
友達と教えあいながら、ワイワイと勉強するのは集中できないというマイナス面もありますが、前向きに勉強できるというプラス面があります。今回はそのプラス面が、自らやる勉強に貢献したということでしょう。
そして、「そのやり方…… 前、塾で教えたやつなんだけど……」と言うと、「え? そうでしたっけ?」と返ってきます。塾での勉強が「やらされる勉強」であることを、まざまざと思い知らされます。
目標勉強時間を書かせるわけ
ところで学校の先生が、テスト前に勉強の目標時間を書かせるのはなぜでしょうか。それは自主的に勉強をしてほしいからです。単に勉強をするのではなく、自主的に勉強をしてほしいという願いがあるからです。
勉強の目標時間を先生が決めてしまえば、それは「やらされる勉強」になってしまいます。その目標時間を自分が決めることで「自らやる勉強」に寄って行くのです。
「モーションはエモーションを生む」とよく言われます。自分で目標勉強時間を決めて書いてしまえば、それで前向きに取り組もうという気になってしまうものなのです。まぁ、先生の作戦ですね。
とはいえ、ここは変にひねくれるのではなく、それに素直に乗っかっておくべきでしょう。目標勉強時間を決めて、それに向かってやってやるぞーと、自分で自分を鼓舞していくのです。
テスト勉強こそ自らやる勉強
どういうときに力が一番つくのかということですが、前向きに勉強に取り組むときに一番力がつきます。その一番前向きに取り組める時が、テスト勉強の時なのです。
中には「定期テスト勉強なんて、やっていられるかぁー」と投げやりになってしまう人もいますが、基本的にはみんな定期テスト前には勉強を頑張りますよね。
定期テスト前の勉強というのは、何かお祭り感があって、逆に楽しささえ感じることもあります。友達と集まって勉強会をするのも楽しいですよね。そんなこんなで定期テスト期間は、前向きに勉強に取り組めるチャンスなのです。
一つの実験があります。とある学区の中学校の中で、一つの学校だけ定期テストの回数を増やしたのです。その学校はなんと6回も定期テストを行いました。他の学校は前期後期それぞれ2回ずつの、計4回です。
結果どうなったかと言いますと、その地区では共通の実力テストがあるのですが、定期テストの回数を増やしたその学校の得点が、他の中学校の得点を大きく上回っていたのです。
もちろん要因は他にもあるかもしれません。しかし定期テストの回数を増やして、生徒たちが定期テストに向けて「自らやる勉強」の時間を増やしたというのが、その学校の成績を上げた一つの要因である可能性は高そうです。
まとめ
話を戻します。テスト期間中の勉強時間に、塾の勉強時間が入るのか、という問題です。これまで見てきたように、テスト勉強と塾の勉強は別物です。「自らやる勉強」と「やらされる勉強」です。
テスト勉強の時間として記入すべきは「自らやる勉強」です。よって本質で考えると、テスト期間中の勉強時間に、塾の勉強時間は入れるべきではありません。
まぁ、実際はそこまで堅苦しく考えなくてもいいとは思いますけれどね。
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