定期テストが終わった後、解答用紙を見せてもらうことがあります。すると、こういうケースがあります。
書いてある部分は全部正解できています。ですが、後半に空欄の部分が多く、点数が取り切れていません。聞くと「時間が足りませんでした」とのことです。
逆に、解答欄を埋めることに命を懸ける人もいます。そんな人の中には、残念ながら符号ミスなどを連発して、点数を落としている人もいます。
問題を解くにあたって「スピード」と「正確性」が必要です。最終的にはそのどちらも、高いレベルで両立させることが理想です。ですがその過程において、その重要性には差があります。さて「スピード」と「正確性」のどちらが、より重要なのでしょうか。
考えているのではなく、迷っている
問題を解いていて、手が止まっている人がいます。「何かわからないことがあるの?」と聞きますと、「いや、今考えているところです」と返ってきます。しかし、この場合の多くは「考えているのではなく、迷っている」のです。
将棋の羽生善治さんは、著書「決断力」でこうおっしゃっています。
一時間以上考えているときは、考えるというよりも迷っている。登山中に、霧の中でルートが見つからずに、同じようなところをぐるぐる回っているという感覚だ。
数学の問題があり、そこで手が止まっている。そして、その子は「考えているのです」と言います。ですが、実はその子の頭の中ではこうなっています。
「やり方が二つあるなぁ。どちらでやった方がいいのかなぁ。どっちにしようかなぁ。計算めんどくさそうだなぁ。なんか途中でわからなくなりそうだなぁ。うーん …… 」
間違えることを恐れない
問題を解いていて、手が止まってしまう人は、間違いを恐れています。あるいは間違った結果、もう一度やり直すことを面倒がっています。それはいけません。
世界の発明王、エジソンの言葉です。
Because not failure, but the way showed that it doesn’t work, that’s success.
それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことがわかったんだから成功なんだよ。
間違えることを、怖がる必要はありません。
数学の計算問題も同じです。まずはやってみます。やってみて、間違っていれば、やり直せばよいのです。スピード感をもってやれば、自分の弱点があらわになります。
移項するときに符号を間違える。累乗の計算でミスをする。通分のミスがある…… などです。それがわかれば、そこを修正すればよいです。自分で自覚していれば、意識しますよね。そうすればミスは減ります。
「ゆっくり=丁寧」ではない
対して一つ一つゆっくりやる人は、そういった弱点が表に出てきません。それはある意味、修正するチャンスを失っている、とも考えられます。
「雑にするな! 丁寧にしろ!」と言われることがありますが、「ゆっくり=丁寧」ではありません。ゆっくりは「現象」で、丁寧は「意識」です。だから当然、「速く丁寧」もあり得ます。むしろ、「速く丁寧」こそ目指すべきです。
「スピード」がある人は弱点が見つかるので、それを意識し、そして修正することにより、「正確性」も上げることができます。
それに対して、「正確性」重視でゆっくりな人は、「スピード」が上がることはありません。慣れで多少は上がるかもしれませんが、ベースの考えが「ゆっくり丁寧」なので、「スピード」の上がる要因がないのです。
まずはやってみる
スピード重視でも、間違えたら意味がないじゃないか、と思うかもしれません。そりゃ、正解するに越したことはありません。ですが、間違えてもいいのです。大事なことなので、もう一度言います。間違えてもいいのです。
とりあえずやってみましょう。まずは手を動かす。後のことは後のこと。片方の方法では解けなかった。ならもう一つの方法でやってみればよいのです。始めなければ、それすらわかりません。
途中でわからなくなりそうと思っていても、その場になってみると続きが浮かぶことが案外あります。二つの方法と思っていたら、やっているうちに三つ目の、もっといいやり方を思いつくこともあります。
まずはやってみることです。
正解できるまで進まないのはダメ
似たようなパターンで、「できるまで、先に進まない」「理解するまで、先に進まない」というのもあります。テストで一つの問題にかかりきりで、ほかの問題ができなかったというのは、このパターンです。
わからなければ、飛ばして次に進みましょう。
他の問題を一通り解いて、またその問題に戻った時に、新たな道が開けることがよくあります。それは他の問題の解き方がヒントになるからです。あるいはいったん思考がリセットされて、先入観が消えることも原因でしょう。
まとめ
「スピードと正確性のどちらが大切か」という話をしました。
1時間かかった90点と、40分でやった70点のどちらが上か? これは条件が違うので、単純には比べられません。もちろん結果だけ見れば、1時間90点の方が上です。ですが40分70点の方も、あと20分かけて見直しをすれば、点数は改善するでしょう。
「スピード」と「正確性」は、もちろんどちらも大切です。その両方を兼ね備えることが理想です。ただその理想に向かう途中経過として、どちらが大切かと言えば、「スピード」です。
時間をかけてゆっくり丁寧に、宿題をする人がいます。いいんですよ。それも一つの方法です。ですが、宿題は「スピード」を鍛える、絶好のチャンスでもあります。ぜひ時間を計ってやってみましょう。その結果、間違いが多くてもやり直したらよいのです。
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