テスト前に何時間もかけて、勉強をする人がいます。周りから見ていると、これだけ頑張っているのだからいい点数が取れるんじゃないか、と期待しかありません。しかしフタを開けてみると、思ったほどの結果が出なかった。良くありますよね。これは特に真面目な子に多い傾向です。
そしてその子たちがよく口にするのが、「勉強のやり方がわからない」という言葉です。
「勉強のやり方がわからない」と思いながら勉強をしても、それでは結果が出るわけがありません。そういう人たちは、勉強には二種類あることを見落としがちです。今回は二種類の勉強とは具体的に何なのか。またそれぞれをどう組み合わせると、勉強の効率が良くなるかについて解説します。
勉強しても、点を取る自信がない
先ほどの、真面目に勉強に取り組む子に「テスト前には何をしているの?」と話を聞いてみると、このような答えが返ってきます。
「教科書を読んでいます」「ノートをまとめています」などなど。
それに対して「なるほど。それでテストで点が取れる自信はついたの?」と聞くと、「全然……ないです」と答えます。テストで点数を取るために勉強をしています。なのに、勉強してもテストで点数を取る自信がない。これは何かがおかしいですね。
本来勉強というものは、自分自身が試行錯誤して、最適なものを見つけるのが一番です。育った環境が違うのですから、人それぞれに最適な勉強方法も違って当たり前です。とはいえ、勉強しても点数が取れる自信につながらない、というのはその人の勉強方法に、何か問題があるのでしょう。
勉強には二つの種類がある
実は勉強には二つの種類があります。一つは「覚える勉強」、もう一つは「弱点を探す勉強」です。勉強時間をたくさんとっているのに、点数が取れないのは、この二つの片方しかやっていない、あるいはその二つがバラバラになっていて、一体になっていないことが原因です。
もう少し具体的に見ていきましょう。一つ目の「覚える勉強」についてです。これは先ほどの例に出てきた「教科書を読む」や「ノートをまとめる」にあたります。真面目な子ほど、この作業に時間を使います。そしてそれをやり終わった後どうなるかというと、「勉強したけどわからない」と言うのです。そして「何がわからないの?」とたずねると、「全部わかりません」あるいは「わからないところがわかりません」と答えます。
次に二つ目の「弱点を探す勉強」について見ていきましょう。これは「問題を解く」ことがスタートラインです。しかし、問題を解くだけでは「弱点を探す勉強」にはなりません。その後丸付けをして、初めて「弱点を探す勉強」になります。不真面目な子に多いのですが、問題をやるだけやってそれでおしまい。丸付けをせずに放ったらかし。これではどこがわからないのかわかりません。本人は勉強をした気になっていますが、それはほとんど意味のない作業です。もうわかりますね。「覚える勉強」と「弱点を探す勉強」をセットにすることこそが、正しい勉強のやり方になるのです。
正しい勉強のやり方
正しい勉強のやり方について、具体的な例を挙げて確認していきましょう。
まず学校や塾などで新しいことを学びます。もちろん集中して聴きましょう。これは「覚える勉強」になります。そして学校や塾からは宿題が出るはずです。それを家に帰ってから解きます。このときわからない問題があるからといって、調べながらしてはいけません。まずは自分の頭の中にある知識だけを使って、問題を解いてしまいます。わからない問題は空欄でかまいません。
そして一通り解き終わったら答え合わせをします。このとき、空欄になっている問題と間違えてしまった問題が自分の弱点です。これが「弱点を探す勉強」になります。空欄の問題や間違えた問題は、解答や解説を読んで確認します。解説を読んでも理解できない問題は、今の自分の実力ではレベルが高すぎる問題です。そういう問題は後回しにして、後日先生に質問しましょう。
そのようにして一通り解答・解説を確認することは「覚える勉強」になります。そして空欄の問題と間違えた問題を、再度解きなおします。全ての問題をやり直す必要はありません。弱点の問題だけを解きなおすのです。この時点でおそらくほとんどの問題が正解になるでしょう。
しかしまだ数問間違える問題がでてくるかもしれません。それこそが本当の弱点問題になります。つまりこの解きなおしも「弱点を探す勉強」になります。解きなおしても間違えてしまった問題は、もう一度解答・解説を見直します。この時点では「あー、そうだった!」とか「ちゃんとやっていれば、できていたわー」という感想になるでしょう。これまた「覚える勉強」です。
そしてその間違えた問題を解きなおします。「弱点を探す勉強」ですね。とはいえ、ここまでくるとすぐに解くことができるでしょう。そしてようやく解説を読んでも理解できない問題を除き、弱点はなくなりました。これで勉強は終了です。
どうですか? 大変だと思いましたか? 実際にやってみるとわかりますが、「弱点を探す勉強」には時間はそれほどかかりません。特に解きなおしの時間はほとんどかからないことがわかるでしょう。
勉強の効率
正しい勉強は効率が良いです。それを別の角度から確認してみましょう。
勉強に一番時間がかかるのはどこでしょうか? もちろん最初に覚えるときですね。先ほどの例でいえば学校や塾の授業にあたります。それらは一日、あるいは一週間のスケジュールに組み込まれていますので、問題ははありません。
では次に時間がかかるのは何でしょうか? 先ほどの例でいえば間違えた問題の解説を読んで確認する作業になります。しかしこれは考えればわかると思いますが、学校や塾の授業時間と比べて短くなります。そして再度間違えた問題の解説を読んで確認する作業は、それよりもさらに短くなるはずです。
今の話はエビングハウスの忘却曲線によって、説明することができます。
この画像が「忘却曲線」と呼ばれるものです。一番上が記憶100、一番下が記憶0になります。(1) の左上から右下に流れる赤線に注目してみましょう。覚えた瞬間は100でしたが、その後0に向けて急降下しているのがわかります。(2) の緑線は1日後に復習した場合の覚えている割合です。(1) の線ほどではありませんが、こちらもどんどん忘れていきます。
それから2回目に復習をするとずいぶん忘れ方が穏やかになるのがわかりますね。((3) の線を参照)。3回目に復習したものをみるとほとんど横ばいになっています。((4) の線を参照)。つまり復習を何度も繰り返すと、それにつれてどんどん忘れにくくなるのです。
次に下から上に向かう矢印に注目しましょう。最初の矢印は長いですね。ある物事を最初に覚えるには、これだけの力が必要なのです。ただ、皆さんは学校や塾などで、それを自然と行っています。だからその大変さを実感していないかもしれません。逆に言えば、それらをおろそかにしてしまうと、後で一から覚えるのは大変になります。くれぐれも学校の授業や、塾の授業をおろそかにしてはなりません。
では2つ目の矢印に注目しましょう。最初に矢印に比べると短くなっていますね。ほぼ半分です。以下同様に復習を繰り返すごとに、矢印の長さは短くなります。つまり復習をすればするほど、勉強は楽になるのです。覚えていることが増えるのですから、当然ですね。
復習をするタイミング
ではどのタイミングで、復習をすればよいのでしょうか? 先ほどの忘却曲線のグラフを見る限りでは、早ければ早いほどいいのではないか、と思うかもしれません。しかし、あまりに早すぎる場合は一続きの勉強になり、復習になりません。やはり少し忘れたころを見計らって復習をするというのが良いでしょう。
学校の授業が終わりクラブ活動をし、家に帰って復習をする。あるいは夕飯を食べてから復習をするのがオススメです。しかし遅くとも次の日には、復習をしておいたほうが良いです。
日曜日にまとめて復習をする、という人がいるかもしれません。しかし、それはお勧めしません。理由はわかりますね。先ほどの忘却曲線を思い出してください。月曜日に習ったことが、6日後の日曜日にどれだけ残っているでしょうか? また一から覚えなおしになってしまい、余計な時間がかかります。そういった意味で学校や塾の宿題を、その日か次の日に済ませておくことは、勉強を楽にするコツでもあるのです。
やる気がないとき
勉強をするにあたっていろいろなことがあります。例えば学校で嫌なことがあって、勉強のやる気がどうしても起きないこともあるでしょう。しかしやる気がないからといって何もしないわけにはいきません。かといって何かを覚えようとしてもその嫌なことがちらついて、全然頭に入りません。どうしましょう?
こういう時には「弱点を探す勉強」をするのです。「弱点を探す勉強」とはどういう勉強でしたか? 「弱点を探す勉強」とは「自力でわかる問題だけを解く」ことでしたね。わからない問題を深く考える必要はありません。わかる問題だけを解けばよいのですから、やる気がないことは何の障害にもなりません。機械的にこなせばよいのです。
ただ科目は考えたほうがいいでしょう。英語の長文や数学の図形・文章題などは、どうしてもじっくり取り組む必要があります。なので「やる気のないとき」には、向きません。
「やる気のないとき」には、社会や理科の一問一答や英語の文法問題などがおすすめです。とりあえず問題を解いて、丸付けまではしておきましょう。間違えた問題の見直し・やり直しは、「やる気がない」なら後回しで構いません。まずは「弱点を探す勉強」に集中します。
よくあるパターンとして、「弱点を探す勉強」をしているうちにだんだん気分が乗ってきて、やる気が上がってくるということがあります。そうなれば見直し・やり直しにも取り組んでいくべきです。ですが、やる気が出ないままのこともあります。それはそれで仕方がありません。やる気が出ない時は問題を解いて、丸付けだけしておきましょう。無理に見直し・やり直しにまで取り組まなくてもよいです。
やる気があるとき
逆にやる気に満ち溢れているときは「覚える勉強」のチャンスです。やる気のないときにため込んでいた「弱点」を見直しして覚えていくのです。
また先ほど述べた、時間がかかる科目に取り組むのもよいですね。例えば英語の長文や、数学の図形・文章題などです。余裕があれば予習に取り組むのもよいかもしれません。やる気のある時はどんどん「覚える勉強」に取り組んでください。
時間帯別勉強方法
また時間帯によって勉強方法を変えることも有効です。「睡眠が記憶を定着させる」という話を聞いたことがありませんか? それは科学的に証明されているそうです。したがって夜にするべき勉強は「覚える勉強」です。頭に叩き込むだけ叩き込んで、すぐに寝てしまいましょう。
逆に良くないのは、一生懸命に勉強して、そのあと最後一回だけゲームをしてから寝よう、というものです。何が悪いのかわかりますね。寝る前にゲームをすると、記憶に残るのは勉強した内容ではなく、最後にやったゲームです。ゲームをするなとは言いません。しかし先ほどの理由で、勉強をした後のゲームはやめましょう。マンガ・テレビも同様です。
朝に勉強をする人もいるでしょう。早起きをして勉強をすることで脳が活性化され、一時間目の授業から、頭すっきりの状態で授業が受けられる、というメリットがあります。しかし朝に勉強したことは、その後の学校の授業や友達との会話、クラブ活動や家に帰ってからのテレビなどによって記憶が上書きされていきます。つまり朝の勉強には「覚える勉強」は向きません。
朝にするのは、「その前日の夜に勉強したことが、覚えられているかどうか」のチェックがおすすめです。いわゆる「弱点を探す勉強」です。あるいは学校の授業で記憶が上書きされてもよい内容、つまり「今日の授業の予習」なども朝の勉強におすすめです。
終わりに
以上で「勉強のやり方」についての話は終わりです。授業をしっかり聴く、問題を解いて丸付けをする。できなかった問題は解説を読んでやり直す。当たり前といえば当たり前のことですね。ですが、その当たり前のことがきっちりできていましたか? もし自分に足りないと思うところがあれば、そこを改めましょう。
それらがきっちりできているという人は、そこから自分がやりやすいように勉強方法を工夫していくとよいでしょう。山に登る方法は一つではありません。登山道を自分の足で登る方法もありますし、ケーブルカーで一気に登る方法もあります。あるいはロッククライミングで登るという方法もあります。
勉強方法も同様です。英単語を覚えるにしても、ノートに何度も書いて覚える方法もあれば、単語カードを作って覚える方法もあります。結局のところ一番大切なのは、試行錯誤しながら自分に合う勉強方法を自分で見つけ出すことです。
人から言われたことだけするのは「やらされる勉強」です。いやいや勉強をしていても効果半減です。自ら進んで勉強をするには目標が必要です。「将来〇〇になりたい」「〇〇高校に行きたい」でもよいですし、単に「テストで90点取ってほめてもらいたい」や「〇〇くんに点数で負けたくない」でもよいです。まずは目標を決めましょう。
目標が決まればそれに向けてどうすればよいかを考えます。おのずと自分のやるべきことが見えてくるのではないでしょうか? そうやって今何をすべきかを考えることもまた、将来に向けて勉強の一つなのです。
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