「寝る間を惜しんで勉強する」という言葉があります。勉強を頑張っている意味で使われます。確かに頑張ってはいるのでしょう。しかしそれは正しい行為なのでしょうか?
寝る間を惜しんで勉強した分、ほかで損をしている。
定期テスト前に自習に来る生徒がいます。ある程度時間がたってから様子を確認すると、なんとまぁ、ぐっすりと寝ています。起こして、どうしたのかたずねると、「いやぁ、昨日徹夜で勉強していたんですよ~」と言います。それを聞いて「そうか、頑張っているな、えらいぞ」…… とはなりません!
いや、確かに頑張っているのです。しかしそれが、ほめられる行為ではない、ということです。まず、自習に来て寝ていることが論外。寝るために自習に来ているのか? なら、家のベットでゆっくり休んだ方が、何倍もましです。かたい机で寝たとしても、体は休まらないでしょう。
また、その調子なら、学校の授業の様子も想像がつきます。そう言うと「授業中は寝ていません」と返ってきますが、仮に寝ていないとしても、集中できているとは思えません。先生の説明はBGMとなり、ボーっとしているのではないですか?
寝る間を惜しんで勉強して学んだ分と、睡眠不足により学校の授業や、自習で学べなかった分を、比べてください。どうひいき目に見積っても同程度です。
「同程度なら、別にいいじゃん」と思う人がいるかもしれません。ですがこれは「ひいき目に見積っても」です。実際は寝る間を惜しんで勉強した分は、その努力ほどの効果は得られていません。
寝る間を惜しんで勉強しても、身にならない。
眠ることの大切さについて、井上昌次郎先生の「人はねむる、動物もねむる」より引用します。小学校の教科書に載っていましたので、知っている人もいるでしょう。
…… 大脳のニューロンが、長い間ねむらずにいると、きずつき、死んでしまうのです。
さっそく恐ろしいですね。寝ないと、脳が死ぬんですよ。さらにこう続きます。
起きている間ずっと働き続け、疲れてしまったニューロンは、ねむっている間にすっかり点検され、修理されます。そして、目を覚ました時には、再び元気に働けるようになっているのです。
ということです。睡眠はとても大切なことだとわかりますね。そして最後はこうあります。
それだけではありません。みなさんのような成長期にある子どもの場合、ねむっている間に、大脳のニューロンは細く長いとっ起をのばし合ってたがいにつながり、新しい連らくもうを作っています。…… つまり、ねむっている間に、みなさんはどんどんかしこくなっているのです。
わかりますか? あなたは賢くなるために勉強しているはずです。ところが、寝る間を惜しんで勉強するというのは、賢くなるチャンスを捨てていることになるのです。本末転倒とはこのことです。
普段から勉強することが大切。
「そうはいっても、寝ずにやらないと間に合わないもん」とあなたは言うかもしれません。それは普段の取り組みがまずいです。普段から学校の授業をしっかり聞き、宿題をし、わからないことをその場その場で解決し、提出物も早めから準備しておけば、そんなに慌てることはないはずです。
毎回定期テスト前に、夜遅くまで勉強している人は、そこを反省すべきです。寝る間を惜しんで勉強しているのは、ほめられることではないのです。
また短期記憶と長期記憶というものがあります。定期テスト前に、寝る間を惜しんで勉強して詰め込んだ内容は、短期記憶となります。勉強した内容が、なんとか定期テストに間に合ったとしましょう。それは定期テストが終わった瞬間に忘れていきます。
あなたの目標は何ですか? 定期テストで点数を取ることですか? それも一つでしょうが、その先に志望校合格がありますよね。入試問題には短期記憶は役に立ちません。範囲が広いからです。すると寝る間を惜しんで勉強した内容を、もう一度やり直すことになります。二度手間ですね。
普段の取り組みを変えることで、こういった二度手間を省くことができるのです。そもそも普段の取り組みがまずいというのは、勉強が面倒だと感じているからそうなるのでしょう。それが結果として、より面倒なことをするはめになるのですから、これまた本末転倒です。勉強が面倒だからこそ、普段からやるべきことを、コツコツとすることが大切なのです。
睡眠を効果的に使った勉強法
眠っている間にニューロンがつながり、新しい連絡網を作っている、という話がありました。このことを利用した勉強のやり方がありますので、紹介します。
それは寝る直前に暗記することです。勉強にはいろいろな種類がありますよね。難しい問題にじっくり取り組んだり、理解しているかどうかをチェックしたり、覚えたことがしっかり使えるように練習したりです。そんないろいろな勉強がある中で「暗記」こそ、寝る直前の勉強に最適です。
おすすめは社会や理科の一問一答形式の用語問題集です。英語の単語でもいいですね。それを寝る直前に、頭に叩き込みます。少々雑でも構いません。ある程度頭に入ったかな、となればすぐに寝ましょう。寝る前に歯磨きをしよう、とかしてはいけません。そんなことは勉強の前に済ましておくのです。
大切なことは、とりあえず暗記して、余計な情報を入れずにすぐに寝ることです。するとニューロンが成長するのと同時に、記憶をきちんと整理してくれるのです。次の日の朝、前日暗記した内容を確認してみましょう。なんと不思議なことでしょう。雑にしていたとしても、案外しっかりと覚えられているのです。
これってすごくないですか。寝ている間に直前に記憶を整理してくれるなら、寝ている間も勉強しているのと同じことです。寝る直前にスマホを触って、ゲームしてから寝ている人はゲームの記憶が整理されてしまいます。この差は大きいですよ。
よく眠るための方法
最後によく眠るための方法をお伝えします。
まず目を閉じます。気持ちを落ち着けましょう。そしてゆっくりと息を吸います。ある程度、吸ったところで息を止めます。息を止めたまま時間を数えます。いち、に、さん、しー、…… 。少し息苦しくなったかな、というところで、ゆっくり息を吐きます。体の中の悪いものが出ていくイメージです。
そして息を吐き切ります。苦しければ無理はしなくていいです。ある程度、吐き切りましたら、そこでまた息を止めます。そしてまたゆっくり息を吸います。ある程度吸ったら息を止めて、数を数えます。いち、に、さん、…… 。
何回か繰り返すうちに、鼓動を感じます。血管が脈打つのを感じます。体中を血液が回っているのを感じます。脳の方にも血液がぐるぐる回っています。そして手の先がじんわりと暖かくなってきますね。
そのまま眠りに落ちたたら最高ですが、そうならなければ、飽きたところでやめてもらって結構です。普通に寝てください。多少呼吸を深くするイメージでいるのもいいかもしれません。それで朝起きたときのすっきり度合いが変わります。だまされたと思って、やってみてください。
まとめ
「寝る間を惜しんで勉強する」のは、本末転倒です。寝る間を惜しんで勉強しなくて済むように、普段から勉強してください。脳の成長を考えると、寝ることもまた勉強です。
睡眠を効果的に使えるようになると、体も休まるし、頭もよくなります。一石二鳥ですね。
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