ある子がテスト勉強で、社会のノートをまとめていました。やり終わったとき、充実感でいっぱいです。ところが実際は、点数が全然取れませんでした。そういうこと、ありますよね。
問題を解きました。間違えた問題の解説を読みました。なるほどなぁ、と思いました。ところが実際のテストでは、正解できませんでした。そういうこと、ありますよね。
できたつもりなのに、点数につながらない。なぜこのようなことがおこるのでしょうか。
実は勉強にひと手間足りないのです。ひと手間足りないがために、ただ勉強をやっているだけで終わってしまい、内容が頭に残らないのです。
では勉強を頭に残すための、ひと手間とは何なのでしょうか。それが「音読勉強法」です。今回は、声に出して読むだけで、内容が頭に残る「音読勉強法」を紹介します。
分からないことはなかなか読めない
意味が分からないものを、見ることはできます。意味が分からないことを、書き写すこともできます。ですが、意味が分からないものを、口にすることは結構難しいです。
では、実験をしてみましょう。次の文を声に出して読んでみてください。
うらにわにはわににわにはにわにわとりがいる
どうでしょう。詰まりながら読むことになったのではないでしょうか。あるいは言葉が上滑りするような感覚になったかもしれません。それはこの文章の内容が、理解できていないからそうなるのです。
このように声に出すことによって、自分の弱点があぶりだされます。これが一つ目のポイントです。自分の弱点がわからないと、勉強は進められませんからね。
理解していると、口に出してすらすらと読める
では、次の実験です。次の文章を読んでください。
裏庭にはワニ、庭には、二羽ニワトリがいる
どうですか。読めましたか。早口言葉ではないので、焦る必要はありません。自分のペースで読めればよいです。心配なら2・3回練習してください。するともうすらすらと読むことができるはずです。
ではあらためて、次の文を声に出して読んでください。
うらにわにはわににわにはにわにわとりがいる
どうですか。読めるようになりましたよね。少し怪しい人も、数回練習すれば、すらすらと口に出して読めるようになったと思います。
これは内容を理解しているから、口に出してスラスラと読めるようになったのです。またスラスラと読めるようになったことで、理解できたとも判断できるのです。
何やらけむに巻かれた感じを受けるかもしれません。ですが、これは本当のことです。では実際の勉強に、音読をどのように活かしていくかを、見ていきましょう。
まとめたノートを声に出して読む
最初に出しましたが、「社会のノートをきれいにまとめた」という例を考えてみましょう。彼女はノートをきれいにまとめました。しかし、テストを受けた結果は惨敗でした。これはもうひと手間足りないのです。
ではノートをきれいにまとめた後、それを音読していればどうなっていたでしょうか。
まず、読み方がわからない漢字が見つかります。歴史では人名の読み方が特に難しいですね。読めないということは本番では書けません。用語も同様です。
また、こんなことがノートに書いてあります。テキストの内容を、そのまま写しているのです。
1924 年に第二次護憲運動が起こりました。憲政会の党首加藤高明が選挙で大勝し、憲政会を中心にした連立内閣を組織しました。その後、「憲政の常道」が慣例となりました。
では、これを声に出して読んでみましょう。
「憲政の常道??? どういうこと?」となりませんか。目だけで字を追っていくと、流してしまいがちですが、実際に声に出して読むと引っかかる部分が出てきます。それが勉強するポイントになります。
読んでみて特に違和感を感じないなら、それはそれでいいです。その場合はその人なりにうまく折り合いをつけて解釈しているのですから、勉強するべきポイントはそこではなかったということになります。
引っかかった部分を調べて、すっきりさせましょう。その後もう一度読んでみると、違和感なくスラスラと読むことができるはずです。
解説を声に出して読む
ある問題の解説にこうあります。さっと目を通してみましょう。
x<0 の範囲で、xの値が増加するとyの値も増加するのは、1次関数では比例定数が正のとき、2次関数では、比例定数が負のときとなる。
どうですか。ふーん、なるほどねーという感じですね。
では次に声に出して読んでみましょう。「x<0 の範囲で…? あぁ、xが0よりも小さいということね」「xの値が増加するとyの値も増加…? xが増えたら、yも増えるということか」「1次関数では…? y=ax+b のやつのことだね。比例定数が正…? 比例定数は…」
と、少し大げさですが、このような感じで、引っかかる部分が出てくるかと思います。黙読の時にはでて来なかった弱点が、声に出して読むことであぶりだされます。
それを一つ一つ確認します。すると引っかかりがなくなるので、その部分はスラスラと読むことができます。またその確認した部分同士を、結合して読んでみましょう。そして引っかかりがなくなるまで、また声に出して練習です。
そのような形で、どんどんつなげていくと、自然なスピードで音読して、それがそのまま頭に残る感覚になります。あるいは口に出る言葉と、自分の考えが並行して進む感覚です。そうなればOKです。
こう書くと、かなり手間なようですが、実際は口に出してモゴモゴというだけですので、大したことはありません。まぁ、だまされたと思ってやってみてください。
英語での音読勉強法
この音読勉強法は、英語の長文にも有効です。
長文問題を読んでいて、さっぱり内容が理解できないことありますよね。その場合、まず音読してみましょう。おそらくグダグダになるはずです。知らない単語があるというのもそうですが、文の区切りもわからないので、つっかえつっかえ読むことになるはずです。
このとき読み方が分からない単語は、しっかり調べて正しい発音を覚えるのが、後々のことを考えるとよいです。とはいえキリがないこともありますので、その辺は臨機応変にしましょう。オリジナルの読み方でも、まぁ何とかなります。
問題集にある長文問題には、普通全訳がついてあります。それを横において、始めます。
I read the letter sometimes to remind myself that we never know how much our actions may affect someone.
2005年センター試験
私たちの行動が誰かにどのくらい影響を与えるか、私たちは決して分からないということを、私はその手紙を時々読んで思い返す
まず「I read the letter sometimes / 私はその手紙を時々読みます」までです。ここまではいいですよね。
ですが、「I read the letter sometimes to remind myself / 私はその手紙を時々読んで思い出す」になると、内容と英語がかみ合わないように感じるかもしれません。それをしっくりくるまで口に出して練習です。
それができれば次は「we never know / 私たちは決して分からない」から再スタートです。そして「we never know how much / 私たちはどのくらいか決して分からない」。大丈夫ですか? 軽く身振りなんかつけてみるといいかもしれません。
次は「our actions may affect someone / 私たちの行動が誰かに影響を与える」です。少し長いですが、内容と言葉がシンクロするように、何度も口に出して練習しましょう。
これができれば、先ほどの文と合体です。「we never know how much our actions may affect someone / 私たちの行動が誰かにどのくらい影響を与えるか、私たちは分からない」これを練習です。
一回では難しいですね。何回も何回も口に出してみましょう。そのうちにしっくりくるようになりますから。うまくいかなければ、前の段階に戻ってやり直すのもありです。この辺は自分の感覚ですから、その感覚に正直にやればよいです。
最後に全てをつなげて練習です。
I read the letter sometimes to remind myself that we never know how much our actions may affect someone.
私たちの行動が誰かにどのくらい影響を与えるか、私たちは決して分からないということを、私はその手紙を読んで時々思い返す
最初はゆっくりでいいです。いけそうなら、少しスピードを上げます。普通のスピードで読んで、かつ理解もついてくるようになれば、完成です。
まとめ
音読勉強法を紹介しました。なんのことはありません。道具も何もいりません。ただ声に出して読むだけです。
ノートをまとめた後は、それを声に出して読んでみる。問題のやり直しをしたときは、解説を声に出して読んでみる。そして、自分の中でしっくりくるまで、何回も口に出して練習するのです。
こんな簡単なことで弱点があぶりだされ、内容が理解できるようになります。そこそこ勉強をやっているつもりなのに、成果がでないなぁと感じている人は、ぜひ「音読勉強法」を試してください。ひと手間加えるだけで、大違いですよ。
コメントをどうぞ