英語の共通テスト試行調査を解いてみて、全体的な印象は、スピード勝負という感じです。ある程度雰囲気読みでやっていき、少々分からない表現も、前後関係から推測していけば、何とかなる印象です。
問題の内容は大問が六つあり、全てが広義の長文問題に属します。文法問題や発音アクセント問題、並び替え問題といった単問の出題はありません。
また設問も英語で書かれてあるのですが、これをじっくり読んでいては時間が足りません。なので、この試行調査や予想問題などで、設問のパターンをつかんでおく必要もあります。
出題の傾向はウェブサイトやチラシ、新聞・雑誌の記事など、身近なものが多いです。身近な話題が多いということは、自分の知っている話題が出題される可能性があります。そうなると本文が読みやすくなりますし、正解も推測することができるかもしれません。
また教科横断的な学習とも関係するかもしれませんが、「黒コショウと白コショウの違い」「オオカミとエルクによる生態系の話」といった理科的な話題や、「お見舞いに不適切な花」「パイロットの男女差について」といった文化的な話題などが出題されています。
「全体的な意見」や「題名」を考えさせるなど、本文に文字として書かれていないことが、正解となる問題も多いです。直接英語力を問うというより、「思考力・判断力」を英語を使って判断しようとしているようにも感じます。
しかし、そういった問題でも消去法だけで解けるものも多くありますし、そうでなくても二択までは消去法で確実に絞ることができます。そして最後二つを考えて解くという感じです。
第一問 目安タイム 8分
ウェブサイトやポスターなど、身近にある英語が題材になっています。情報を素早く探し出す能力が問われています。
H29年度 A
遊園地のウェブサイトを見て、問題を解く形式。先に設問に目を通して、問われている情報をウェブサイトから探す、という手順で解くことになります。のんきに全文読んでいたら、後半の時間が足りなくなるので、ここは一気に行きたい。
H30年度 A
手紙を見ながら、問題を解く形式。先に設問に目を通しで、問われている情報を手紙から探す、という手順で解くことになります。設問にある語句をヒントに、本文から設問の該当部分を探すのですが、言い換え表現になっていることが多いので、注意です。
H29年度 B
ポスターを見て、問題を解く形式。設問に該当する部分がどこにあるのか、すぐにわかりづらいです。さーっと流し読みして、その場所に来たら気づけるようにしたいです。
H30年度 B
参加者を募るウェブサイトを見て、問題を解く形式。
「その会に参加すると何をすることになるのか」「なぜその会に参加することがいい機会なのか」という問題では、全体のスケジュールや、情報から判断しなくてはなりません。
単に本文に書いてあるからという理由では選べず、ある程度の思考力が必要な問題です。
第二問 目安タイム 8分
Aは「事実」と「意見」を区別する問題。Bはディベートの問題で、「賛成」「反対」に関するものが出題されています。
H29年度 A
レストランのレビュー見て、問題を解く形式。問1、問2、問3がそれぞれ別のレストランの問題になっているので、設問ごとに該当するレビューを見て解答することになります。
ラーメン屋だからランチも大丈夫だろうと思ったら、レビューに Open 5 p.m. ~ 6 a.m. とあるなど、自分の中の常識だけで判断するとミスします。
問4は「事実」を問われる問題。レビューに書いてあっても、それが「意見」だったら不正解になります。一見難しそうですが、選択肢を「事実」と「意見」に分けると、それだけで絞ることができますので、ある意味楽かもしれません。
H30年度 A
レシピを見ながら、問題を解く形式。
設問で問われている情報を、本文から探すというのが手順ですが、問3では「raw」の一語を読み飛ばしてしまうと、正確に答えを判断できなくなってしまいます。速さの中にも正確性が必要です。とはいえ、消去法である程度推測できるかとも思いますが。
「事実」と「意見」を問われる問題も出ています。この形式が出ると分かっていたら、あわてることもないので、むしろ楽に解けるのではないかとも思います。
H29年度 B
学生のアルバイトについて、賛成か反対かという記事を読んで、問題を解く形式。
段落が4つあり、それぞれの段落のテーマが「序論」「賛成意見」「反対意見」「結論」と、はっきりしています。段落構成を意識していれば、問2は「賛成意見」、問3は「反対意見」を探すのですから、本文のどこを見ればよいかはすぐわかります。
問1は直接書かれていないが、本文の内容から逆算して考えると、答えはそうなるという、まさに「思考力」が問われる問題です。
H30年度 B
新聞記事を読んで、問題を解く形式。
文中で使われている「慣用句(?)」の意味を推測する問題が出ています。センター試験にも「意味類推」としてい出ていた形式です。ただ、小問の一つなので、こちらの方が断然簡単です。
問5の選択肢は「特に意見はない」「部分的に賛成」「強く賛成」「強く反対」となっています。単なる賛成か反対かという問題ではないんですね。
第三問 目安タイム 12分
Aはイラストつきの文を読んで解く問題で、本文とイラストを照らし合わせて解く問題があります。Bは短めの物語を読んで解く問題で、順序を問う問題が出ています。
H29年度 A
ある島に旅行に行った人のブログを見て、問題を解く形式。英文の他に地図があります。
問1は本文の内容だけでは判断が出来ず、本文と地図の内容を総合して解く問題もあります。とはいえ、それほど難しくはありません。本文で半分に絞れて、地図で一つに絞る感じです。逆でもいいですが。
問2は全体から何がわかるかという問題。とはいえ、全体から推測するわけではなく、選択肢に該当する本文内容から、一つ一つ選択肢を判断すればよいという、いわゆる普通の問題です。
H30年度 A
文化祭に参加した人のブログを見て、問題を解く形式。
ブログを書いた人がカラオケ大会に参加したのですが、その順位がブログ内容だけではわかりません。実は添付されている写真と総合して考えると、順位がわかるという仕掛けになっています。
問題としては面白いですが、英語のテストとしてはどうなんでしょう? まだH29年度の地図の問題は日常生活で役立つと思いますが、このH30の問題は、単なるクイズになっているような気がします。まぁ、思考力を計っていると考えると、これでいいかとも思いますが……
H29年度 B
新聞記事を見て、問題を解く形式。
本文が二段組になっていて、見た目が変わっています。いろんな形式の英文に慣れてもらおうという狙いでしょうか。
問1はひっかけ問題。本文に出てくる地名の順番だけを追っていると、失敗します。
問3は本文に直接書かれていないが、推測して答えを出す問題です。ただ、その他の選択肢が明らかに違うので、消去法でも解けます。
H30年度 B
物語を読んで、問題に答える形式。
問1は感情の変化の流れを選ぶ問題。H29年度のような本文に出てくる順序と、実際の順序が違うというひっかけはありませんでした。その代わりに感情をあらわす語句が、選択肢と本文とで言い換えられています。
お見舞いに持って行くのに、ふさわしくない花という題材でした。一般常識として、この話を知っている人にとっては、読みやすい内容だったのではないかと思います。
第四問 目安タイム 12分
図表読解問題になっています。
H29年度
ボランティアに関するグラフとレポートから、問題に答えるという形式。
問1は本文から推測する必要がある問題。そこまで発想力が必要ではありませんが、直接書かれていないところから、推測する必要があります。
問2問3は「両方が言っていること」「両方とも言っていないこと」を選ぶ問題。これは消去法で解けばよいです。特に問3の選択肢が、グラフ2の項目になっていることに気付ければ、解答がやりやすくなります。
グラフが使われていましたが、あまり有効活用されていない気がします。
H30年度
グラフを含む記事を見て、問題に答える形式。
問1は両方言っていないことを選ぶ問題。消去法でやるとよい。
問2の The librarian の出身地を答える問題は、本文とグラフを照らし合わせて考える問題です。H29年度はグラフが有効に使われていない気がしましたが、H30年度では、有効に使われていました。
問3は正解が1つとは限らない問題。とはいえ登場人物が David と librarian と二人いますので、答えもそれぞれ一つずつあり、合計2つになります。そうなるだろうなぁという結果。もちろん消去法で考えるのも有効です。
問4は David と librarian それぞれが主張するものを、選択肢から選ぶ問題。
選択肢が通常の問題は4つのところ、この問題は5つになっているので、こんがらがらないようにする必要があります。
David の文を読んで David の主張を一つ選び、次に librarian の文を読んで、librarian の主張を選ぶというように、分けてやるのが効率が良いです。
ですが、全部読んでから選択肢に目を通して、書かれていないことを消去法で消していき、残ったものから考えるというやり方もあります。この辺は自分に合うやり方を考えるとよいです。
問5は全体を踏まえて題名をつける問題。このパターンの問題が多い印象です。
第五問 目安タイム 20分
H29年度とH30年度で、第五問と第六問の内容が入れ替わっています。ここではH29年度では第六問、H30年度では第五問に出題された、物語文読解形式の問題を確認していきます。
H29年度
ある小説を読んで、その感想を記したある人のレビューの空欄を埋めるという形式。
ただ残念ながら、内容が面白くない。その原因はテーマがぶれているからだと思います。「見た目と本質は違う」というもの一つに絞って話を進めれば、もっと読みやすかったのではないかと思います。ただそれはそれで、作問との兼ね合いもあって、難しいのかもしれませんが。
レビューの空欄周辺の英文を先に読んでおくと、何について問われているかが分かり、本文の該当部分が分かりやすくなります。
問1は物語中盤での、話の内容を問う問題。空所が ( ) → ( ) と2か所あり、完全解答となっています。
ですが実際は設問がそれぞれ独立しているので、単なる内容一致問題になっています。しかもそれぞれの問題も、消去法で解けますので、時系列にしている意味がありません。
せめて本文に書かれてあるけれど、順番として合わないので不正解になるという選択肢があるのならまだしも、これなら、完全解答にする意味がないのではないでしょうか。
問3はレビューを書いた人の意見を答える問題。普通は物語の作者の考えを問う形式ですが、そこを少し捻っています。
物語では美談として語られている内容を、レビューを書いた人は否定的に見ている。それを答えさせるというのが、面白いですね。
問4はこのレビューを書いた人が、この本を勧めるポイントを答える問題。問3と同じく、自分が感じる物語のテーマではなく、レビューを書いた人が感じたであろうおすすめポイントを答える点で、少し捻っています。
読んで自分が感じることを選ぶと間違いになりますので、消去法で絞っていくことになります。とはいえ、消去法でありえない選択肢を消していくと、結局一つしか残りません。あまりこの設定を生かした問題になっていないような気がします。
普通に読めばこう感じるだろうというものと、このレビューをした人が感じるであろう選択肢の2つが、最後に残るようになっていればとも思います。
グローバル化が進み、多文化共生ということが言われています。
世の中にはいろんな意見を持った人がいて、自分と違った考え方を持った人ともうまく折り合いをつけていく必要がある、ということを、テストを通じていっているのではないかなぁ、というのは勘繰り過ぎですかね。
H30年度
ある人物についての雑誌の記事 (伝記) を読んで、その人物に関するポスターの空欄を埋めるという形式。
設問もそうですが、ポスターの空欄周辺の英文を先に読んでおくと、何について問われているかが分かり、本文の該当部分が分かりやすくなります。
問1は選択肢を時系列順に並び替える問題。言い換え表現はありますが、本文にでできた順になっており、ひっかけはありませんでした。
問2は正解が1つとは限らない問題。本文の2か所に分かれて理由が書かれてあったので、難しかったようです。消去法で絞るのが実践的でしょう。
問3はその新聞のモットーを答える問題。直接本文に書かれていませんが、やってきたことから推測します。これはいい問題だったという印象です。消去法で解けますが、選択肢によってはもう少し難しくなりそうです。
問4も正解が1つとは限らない問題。やはり消去法で絞るのが実践的です。
第六問 目安タイム 20分
H29年度とH30年度で、第五問と第六問の内容が入れ替わっています。ここでは、H29年度では第五問、H30年度では第六問に出題された、A と B に分かれている形式の論説文問題を確認していきます。
出題されているのは、記事を読んで答える問題です。
H29年度 A
新聞記事を見て、問題に答える形式。
問3に空所文補充の問題が出ています。代名詞や指示語が何を指すのかを確認しながら、入る場所を探していくことになります。
H30年度 A
男性パイロットと女性パイロットについての記事を読んで、問題に答える形式。
問1はある意味「意味類推」問題とも言えます。消去法だけでは絞り切れず、読解力が必要になります。
問2は問題がこうなっています。
little の前に a がないので「男女の差が少ししかない」と否定的な意味になります。この一語を見逃すか、意味をとらえ違えて、ミスした人が多かったようです。
ただ、同じような表現が本文にもありますので、そこと照らし合わせて考えれば、仮に見落としていても、その見落としに気づくことができるのではないかとも思います。
H29年度 B
黒コショウと白コショウに関する記事を読んで、メモの空欄を埋めるという形式。メモを見れば何を問われているかがわかるので、設問の問題文は読む必要がありません。
問1は段落ごとのテーマを答える問題。まとめてやるのではなく、それぞれの段落を読んだら、その都度この問題にあたるのが良いでしょう。
問2が正解率6%の問題。
「以下の中で、記事に記載されている共通点と相違点はそれぞれ ( 31 ) と ( 32 ) です。(各ボックスに複数の選択肢を選ぶことができます)」
という問題で、選択肢のうちの一つがどちらのボックスにも入らないものがありました。これは問題の出し方が、不親切です。ひっかけ問題にもなっていません。もしこうしたいのなら「どちらにも当てはまらないものは選ぶ必要はありません」と記すべきです。
資料分析では「2つを独立して問うか、部分点を与えるなどの工夫をすれば……」と書いてありますが、そういう問題じゃないと思うのですよ。
H30 B
イエローストーン国立公園の記事を見て、問題に答える形式。
問2は正しいグラフを選ぶ問題。年号がグラフに書いてありますので、それを本文から探して、照らし合わせながらやれば、大丈夫でしょう。
文の意味が分からなくても書かれてある数字だけで、正解を選べてしまう気もします。もう少し選択肢のグラフの方に工夫があっても良かったのではないかと思います。
問3は選択肢から2つ選ぶ問題。正解の数が決まっているので、やりやすかったと思います。でもこれまで正解の数が分からないように出題されていたのに、なぜこの問題だけ正解の数を指定したのでしょうか? 意図がよくわかりません。
正解の数を指定しているにもかかわらず、この問題の正解率が低いです。最終盤の問題なので、考える時間が足りなかったからだと思います。
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