「うちの子、成果は出ていますか?」という問い合わせがあります。それを受けるたびに私の中で、もやもやした気持ちが起こります。そもそも成果とは何なのか? 何をもって成果が出ていると言えるのか? 成果について思うところを書いてみたいと思います。
「うちの子、成果は出ていますか?」と言われても……
「うちの子、成果は出ていますか?」という問い合わせがあったとき、私は「えーっと …… 、まぁ ……」と、奥歯に物が挟まった言い方をしてしまいます。
教室に来て勉強をすれば、なにがしかの成果はあります。じゃぁ、それを言ってあげればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、話はそう単純じゃないんですね。
成果とは何か?
まず、成果とは何かという問題があります。その共通認識がないと、話をしてもかみ合いません。一般的に成果とは「あることをして得られたよい結果」という意味になります。ただ何をもって「よい」とするのかは、立場によって変わります。
例えば86点という点数は、通知表に5がつくいい点数です。ですが、普段90点以上取っている人にとっては、残念な結果になります。70点という点数だと、通知表に5がつきません。しかし普段50点しか取れていない人にとっては、いい点数になります。
また数字で計れない部分があります。例えば、宿題をきちんとするようになった、授業をちゃんと聞くようになった、質問をするようになった、などです。
あるいは「学校であったことを、自分から話してくれるようになった」というのも、私にとっては成果です。信頼関係ができてきた、ということですからね。挨拶をするようになった、遅刻をしなくなった、といった、一見勉強に関係しない部分も、成果になります。
そしてこれらの部分は、一直線に右肩上がりとはなりません。「三歩進んで二歩下がる」という具合です。
成果が出ていないから、成果が気になる。
そこで「うちの子、成果は出ていますか?」です。この問い合わせをするというのは、当然保護者の方で、成果が出ていないのではないか、と思うからです。ちょうど「二歩下がっている」ときに、連絡があるわけです。
そんなところに「テストで86点とれましたよ」と言っても、「でも90点取れなかったですよね」となります。「最近、学校であったことを、自分から話してくれるようになったんですよ」と言っても、「それがどうしたんですか? 成績悪いんですよ」となりますよね。
つまり「うちの子、成果は出ていますか?」という問い合わせに対して、まともに成果についての話をしても、かみ合わないのです。
「成果が出ているか」と問い合わせた後は、こうなる。
そういった理由で、「うちの子、成果は出ていますか?」と問い合わせがあった場合、その子のできていない点、つまづいている点など、「悪い点」を中心に話をすることになります。そして最後に少し「いい点」について話をして、「もう少し長い目で見てあげてください」と話を締めくくります。
そうすると保護者の方も、多少もやもやしながらも、「まぁ、勉強するのは子供ですから、先生に言ってもしょうがないわね」となります。問題はその後です。そのあと家でどういう話になるのか、およそ想像がつきます。
「今日、先生と話をしたんだけど、宿題をやりっぱなしで、やり直しができていないらしいね。ガミガミ」という感じです。
他人の言葉を使ってほめるのは、とても効果があります。その逆に他人の言葉を使って叱るのは、誰にとっても得はありません。
子供の立場で考えてみましょう。先生に対しては、親に言いつけられたという、不信感を持ちます。親に対しても、子供は面子をつぶされたと反抗心を持ちます。
子供と親、先生の三者が正三角形を描くように、しっかりとラインをつないでいくことが、子供の勉強にとって良いことです。そのうちの子供と親、子供と先生のラインが切れてしまえば、この正三角形は崩壊してしまいます。
ということで「うちの子、成果は出ていますか?」と問い合わせても、何も解決しないのです。
成果が出ているかを、問い合わせる前に
とはいえ家ではだらだらしていて、勉強をしている様子がうかがえない。黙っていたら何も変わりそうもない。ではどうしたらよいのでしょうか?
一つは勉強をする環境を整えて、何も言わないことです。例えば、8時から9時はテレビをつけない時間にする。そしてその時間を、ご自身の資格取得のための、勉強時間にするなんていかがでしょうか。
おうちの方の頑張っている姿を見て、自分も頑張らないとと思うかもしれません。
あるいは、面と向かって勉強の話をするのも一つです。ただ、叱ってはいけません。叱ると反発します。「英語の成績が全然上がらないけれど、何が原因だと思う?」と冷静に、親の問題として相談するのです。
すると子供は子供なりに、いろいろ考えています。「単語が覚えられていない」と答えるかもしれません。そうすれば、「そうか、じゃぁ、頑張っておぼえないとね。何か協力してほしいことある? テストしてあげようか?」となるかもしれません。
意識の薄い子なら「勉強していなかった」と、ふんわりした答えが返ってくるかもしれません。それでも「そうか、じゃぁ、どうやったら勉強できるかな? 勉強時間を決めてみる? 家で勉強しづらかったら、塾で自習できるかどうか聞いてあげようか?」となります。話が前向きですよね。
まとめ
成果とは、もともと「成れの果て」です。つまり全てが終わった後で、振り返って確認するものだと思うのです。途中経過は成果ではありません。つまり「成果が出たか、出なかったか」は、「志望校に合格したか、しなかったか」なのです。
「成果が出ているのか」と、不安になったら、まず最終目標を確認してください。目標が決まっていないと、成果も何もありません。次にその目標に向けて、何が必要なのかを考えてください。わからなければ、それを相談すればよいです。
「うちの子、成果は出ていますか?」ではなく、「うちの子が成果を出すために、どうしたらいいでしょうか?」なら、話が前向きになりますよね。
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