ツイッターで「英文法と英単語はどちらを優先するべきですか」という質問がありました。それに対する返信を見てみると、「英単語を優先するほうがいい」と言っている人が多くいました。
果たして英語の学習において、本当に英単語優先こそ正義なのでしょうか。近頃文法軽視の風潮がある気がしますが、それについて思うところを書いてみました。
英単語が分かっていても、文が読めない
単語は確かに大切です。ですが、特に読解問題に関しては文法や構文の知識も必要となります。
よくあるのが、知っている単語が並んでいるけれど、どういう内容なのかわからないというものです。これは文法や構文の知識が不足していることによって起こります。
次の英文を見てみましょう。2016年のセンター試験の長文問題にあったものです。
Another problem faced by opera is how to meet the demands of audiences who are influenced by popular entertainment.
別の、問題、顔、オペラ、どのように、会う、要求、観客、誰、影響を及ぼす、人気のある、エンターテイメント
単語の意味は大体わかりますが、全体として意味がとりづらくないでしょうか。この英文は構文が少しごちゃついています。それを解きほぐしてみましょう。
Another problem faced by opera is how to meet the demands of audiences who are influenced by popular entertainment.
まず is が動詞で、その前が主部、後ろが述部になるのを見抜かなくてはなりません。
次に主部の部分ですが、Another problem faced by opera は faced by opera の部分が分詞の形容詞的用法によって Another problem にかかっています。
また how to meet は、「疑問詞 to 不定詞」の形です。how to ~で「どのように~すべきか、~する方法」と訳します。
audiences who are influenced by popular entertainment の who は関係代名詞で、直前の audiences を先行詞にしています。つまり are influenced by popular entertainment である audiences という関係です。
もちろん are influenced は、「be動詞+過去分詞」で受け身の表現です。
そういうことを踏まえてきっちり訳をしてみるとこうなります。
日本語でも同様です。数学の問題でこういうものがあります。
十の位の数が5である3桁の自然数がある。各位の数の和は一の位の数の7倍で、百の位の数と一の位の数を入れかえてできる数は、もとの数より495小さいという。もとの自然数を求めなさい。
どうですか。言葉の意味は分かりますよね。ですが、一読するだけでは、全体として意味がとりづらくないですか。
ということで、単語だけわかっていても、文の構造や文法事項が理解できていないと、意味が取れないということは十分あり得るのです。
これが会話なら話はまた別です。話の中で身振り手振りもそうですし、声の強弱、相手の理解が怪しそうなら補足説明が入ります。
先ほどの例ならこういう感じです。
というような感じです。
これは文字で読むとややこしいですが、身振り手振りをまじえて、音で聞くと、内容はすんなり入ってくると思います。
話し言葉では、多少の繰り返しや重複はあまり気になりません。なので簡単な文章をたくさんつなげていく傾向にあります。つまり複雑な文法事項や構文は出てきません。
それに対して書き言葉は、読み返すことができますので、複雑な構文が使われることがあります。その反面、上の例でもわかる通り重複があるととても読みにくいです。
書き言葉と話し言葉は、そういった意味では逆の関係になっているのです。
「英文法と英単語はどちらを優先するべきですか」という最初の話に戻りましょう。これは目的によります。会話を重視するなら、文法の知識はそれほど必要ではないかもしれません。むしろたくさん単語を知っている方が役に立ちます。それってどういうこと? と聞きなおさなくて済みますからね。
ただ、学生にとっての英語の評価とは、ペーパーテストがほとんどです。教育改革によって英会話の重要性が増しているのも事実です。ですがそうはいっても半分以上は筆記テストによる評価になります。すると相対的に、文法や構文の知識は必要になります。
文法は全く必要ないのか。
その他には、程度の問題もあります。「中学レベルの文法知識があれば、問題ない」とよく言われます。逆に言えば、中学レベルの文法知識は必要だということです。
単語の知識はあるが、文法の知識がゼロの状態を想像してください。
ぼく…食べる…お菓子…
という状況ですね。子供ならいいですが、それなりの大人になって、それなりの会話をしようとするなら、正しい文法の知識を持って、それにのっとった話をするべきでしょう。
卓球選手の平野美宇さんが、海外でインタビューに答えていました。そこで Who is your favorite singer?という質問がありました。それに対して彼女は I like singer is ~…… と答えていました。
当時彼女は中学三年生だったか、高校一年生だったかそれくらいでした。なので微笑ましいなぁ、という感じでしたが、もう少し大人になったらその反応もどうなるか分かりません。
いや、いいんですよ。そういう細かい文法事項を気にせず、ガンガン話していくことで、徐々に上達していくものですし、通訳を使わずに自分の言葉で話そうとしていることは、素晴らしいことだと思います。
しかし良くない話ではありますが、外国人の人がおかしな日本語を使っていたら、笑ってしまいますよね。逆の立場になりたくないなら、ある程度の文法の知識はあったほうがいいですよね。
また文法が分からないと、人から教えてもらう時に困ります。
例えば長文を読んでいて、意味が取れなくなってしまうことがありますよね。その時に「ここの have は持つの意味ではなく、現在完了の have なので……」と言われても、現在完了という文法事項が分かっていなければ、話は通じません。
テキストを使った勉強で、人から教えてもらうときはどうしても文法用語は出てきます。また文法の内容に沿った説明になることも多いです。そのため、最低限の文法知識は必要ではないでしょうか。
上達する道のり
上達する道のりも一本道ではありません。普通の言語獲得の道筋は、このような感じです。「アーアー」→「マーマー」→「ママー」→「お母さん。ごはん」→「お母さん、お腹がすいた」
英単語優先派の人は、このことからも文法は後からついてくるから、まず単語を覚えるべきだと言います。なるほど一理あります。ですが、これは周りが英語の環境に囲まれているからこそです。
先ほどの例に挙げた平野美宇さんであれば、海外で活躍されていますので、そういったインタビューを受けたり、海外選手たちと一緒に練習して、話したりする機会も多いでしょう。ならば、文法など気にせず、どんどん自分の言葉で話していき、多少は恥をかきながらやっていった方が、英語は身につきやすいです。
ですが、普通の中学生、高校生ならば、周りに英語でやり取りする環境はさほどありません。普通はテキストで勉強しますよね。となれば文法はおろそかにするべきではありません。というよりも英文を読む中で、どういう構文になっているだろうと、分からなくなる場面は普通にあるでしょう。
つまり分からない単語を調べるのと同じように、分からない構文や文法的な疑問点は、その場その場で解消しておくことが大切です。
まとめ
「英文法と英単語はどちらを優先するべきですか」についてです。個人的な考えを言えば、そんなことを気にしないで、たくさん英文を読みましょう、となります。
英単語が大事だからと言って、ターゲットなどの単語帳だけをひたすらやるのはどうかと思いますし、文法問題ばかりひたすらやるのも違います。どちらも並行してやればいいじゃないかと思います。
私のおすすめは、たくさん英文を読んで、そしてその中で出てきた単語や文法、構文を確認していくという流れです。いうなれば、文法優先、単語優先ではなく、「長文優先」ということです。
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